横浜市戸塚区のおながファミリー眼科

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網膜静脈閉塞症

網膜静脈閉塞症とは?

「網膜」とは目の内側にあるうすい膜組織で、光を感じてこれを電気信号に変える大切な役割をしています。

この網膜に分布している血管「網膜静脈」に血栓(血のかたまり)ができて血液のめぐりが悪くなり、その結果血管が破れて網膜に出血が起こるという病気が「網膜静脈閉塞症」です。

病気のはっきりとした原因は不明ですが、動脈硬化がこの病気に関係しているといわれています。

網膜静脈閉塞症の種類

網膜静脈閉塞症には、以下の2つの種類があり、予後は大きく異なります。

網膜静脈分枝閉塞症は黄斑(網膜の中央部)に出血がかかっていても治療により0.6ぐらいまでの視力には改善することが多いのですが、網膜中心静脈閉塞症の視力予後は一般に不良です。

つまり矯正(メガネ)しても視力は0.4以下に落ち、網膜の血のめぐりの特に悪い重症例(虚血型)ではさらに重い後遺症が残り、失明に近くなってしまうことがあります。

網膜静脈閉塞症で起こること

この病気には以下のような合併症、症状が起こります。

① 網膜出血(視野が暗くなる、斑点が見える)

この疾患は斑状の出血が網膜に多発することが特徴です。

視野が暗くなり、染み状に見えづらくなります。この出血は手術で取り除くことはできず、自然吸収を待つしかありません。

② 黄斑浮腫(白~グレーにかすんだり、ゆがんで見えて視力が落ちる)

黄斑浮腫とは、網膜の中央部(黄斑部)に水がたまる(むくむ)現象です。

網膜静脈閉塞症による出血が黄斑に及ぶとほぼ必発です。

黄斑浮腫は視力低下の原因となり、後遺症 を残します。治療方法は後に説明します。

③ 硝子体出血(急に視野全体がかすんでほとんど見えなくなる)

硝子体出血とは、目の中央部にあるゼリー状組織(硝子体)の中へ起こる出血です。

硝子体は本来透明で、光を通します。そこへ出血すると光が遮られて見えなくなります。

網膜静脈閉塞症では網膜の循環が著しく悪くなります。

1年~数年すると、時に病的な血管(新生血管)が生じます。

この新生血管はもろくて出血しやすく、硝子体出血を起こします。

レーザー治療

これを予防するにはレーザー治療が必要です。

しかし、レーザー治療を行っても硝子体出血を起こすことがあり、その場合には手術が必要です。

④ 網膜剥離(視野の端から黒いカーテンが広がってくる)

眼球の壁の一番内側にある神経組織を網膜といいます。

網膜静脈閉塞症が起こって栄養が行きわたらない状態が長く続くと網膜がうすくなり破れやすくなります。

そこに上述した新生血管が発生し、周囲に増殖膜という病的な膜が形成されて網膜に力がかかると、網膜が破れ、そこから網膜は眼球壁から剥がれてきて「網膜剥離」という状態になります。

手術が必要ですが、網膜は古い網膜静脈閉塞症により萎縮してうすくなっているので、なかなか治らず、手術を繰り返すことがあります。

⑤ 血管新生緑内障(目と頭が非常に痛くなり、失明する)

これは網膜静脈分枝閉塞症で起こることはほとんどなく、網膜中心静脈閉塞症に起こりやすい重い合併症です。

硝子体出血の原因となる新生血管が、眼球の中の水の排水口に生じると眼内の水の循環が悪くなり、緑内障を起こします。

これを血管新生緑内障といいますが、非常に重症の緑内障で、進行すると激しい眼痛や頭痛を伴います。

治療は徹底したレーザー治療や後述する抗VEGF治療、緑内障手術ですが、効果には限界があり失明することも多いです。

網膜静脈閉塞症に必要な検査

① 眼底検査

網膜静脈閉塞症は眼底の病気ですから、診察時には点眼薬で散瞳させる(ひとみを広げる)必要があります。

診察後は数時間まぶしくてはっきり見えませんから、眼科を受診するときには自分で自動車を運転して来ないでください。

サングラスを持ってる場合は、持参してください。

この散瞳しての眼底検査は毎回必ず行います。眼底写真を記録することもあります。

② OCT検査(optical coherence tomography:光干渉断層計検査)

網膜黄斑部の断面図を撮影する検査で、網膜静脈閉塞症に合併する黄斑浮腫(前述)の診断に用います。

この検査は痛みはなく、目に直接触れることはありません。

散瞳しなくても検査できますが、散瞳したほうがよりきれいな画像が得られます。

③ 造影検査

オレンジ色の蛍光造影剤を腕から注射して連続的に写真を撮影します。

網膜の循環状態を調べたり、新生血管(病的血管)の有無を調べることができます。

アナフィラキシーショックのリスク

網膜静脈閉塞症には必要な検査なのですが、造影剤アレルギーによるアナフィラキシーショック(0.005〜0.5%、死亡につながる)の可能性があり、それが最大の欠点となっています。

④ OCTアンジオグラフィ

近年開発された検査で、造影剤を使わないで眼底の血管の状態を調べることができます。

造影剤を使わないのでアナフィラキシーショックの可能性がなく、大きく期待されている検査です。

網膜静脈閉塞症の治療

網膜静脈閉塞症の治療は、大きく4つに分かれます。

① 網膜循環の改善

この病気は網膜の血管が閉塞して起こったのですから、網膜循環を改善することが大事です。

循環の改善には

が大切です。

1)血をさらさらにする薬

この病気に対し、血をさらさらにする薬(バイアスピリンなど)、止血剤、循環改善薬が処方されることが多いです。

効果のある可能性はありますが、現在のところ、その有効性は証明されていません。

しかし服用しても悪くはないので、担当医の考えに従ってください。

なお胃腸の弱い人は申し出てください。

2)水分の補給

冬場は血圧が上がりやすいので、網膜静脈閉塞症が起こりやすくなります。

しかし血圧が低めになる夏も網膜静脈閉塞症は増加します。

その原因は脱水だと推測されます。

水分が不足すると血がドロドロになって血管が詰まりやすくなります。

日中や暑いときにはもちろん、寝る前に必ず水分を補給するようにしてください。

ただし心臓や腎臓に病気のある人は水分の補給量に関しては注意が必要で、担当医によく相談してください。

また、暑いところから急に寒いところへ出たり、あるいは逆のことは、体がついていけないことがあります。

温度の変化はゆるやかにしてください。

② 黄斑浮腫に対する治療

黄斑浮腫は難治です。

以下の治療がありますが、再発を繰り返します。

1)抗VEGF治療

VEGFはvascular endothelial growth factor の頭文字を取ったもので、日本語では「血管内皮増殖因子」というタンパク質の一種です。

黄斑浮腫の発症と増悪にはこのVEGFが関与しているので、これをブロックする薬剤を目の中に注射して治療します。

この治療は黄斑浮腫に最も有効です。

欠点は以下のようなものがあります。

合併症には、感染(眼内炎)、出血、網膜剥離、白内障などがあります。

合併症の確率は0.1〜1%程度です。眼内炎は失明のリスクがあります。

2)ステロイド

ステロイドという薬は安価で黄斑浮腫に効果があります。

目のまわり(テノン嚢下という場所)や目の中に注射をします。

欠点は、注射の効果が数ヵ月程度しか持続しないこと、繰り返し注射には限界があることです。

副作用として白内障や緑内障があります(確率30~40%程度)。

ステロイドによる緑内障は難治なことがあり、手術が必要になったり失明のリスクがあります。

3)内服・点眼

炭酸脱水酵素阻害薬という薬の内服や点眼が有効なことがありますが、黄斑浮腫の治療の適応として認められていません。

4)レーザー治療

黄斑浮腫に対してレーザー治療を行うことがあります。

注射と異なっていったん効けば効果は永続的です。

しかしレーザー治療を行っても黄斑浮腫が改善しないケースがあります。

また、ハイパワーでレーザー治療を行うと視野異常(暗点)を起こすため、網膜にやさしい低出力のレーザー機器が最近開発されました。

5)手術

黄斑浮腫に対して硝子体手術を行うことがあります。

一時期はさかんに行われましたが、近年は抗VEGF治療が第一選択になったので、手術の頻度は減りました。

しかし効果の永続性という点では手術がまさります。

欠点は、手術をしても半数程度は治らないこと、治っても再発することがある、そして硝子体手術に関する一般的なリスクを伴うことです。

③病的な血管の発生を防ぐ治療(レーザー治療)

網膜中心静脈閉塞症では網膜の広範囲にわたって循環障害が起こるため、これを補うために新しい病的血管(新生血管)が眼球内に生じてきます。

これは問題の多い血管で、硝子体出血や血管新生緑内障の原因となり、失明につながります。

その予防には網膜にレーザー治療が有効です。

レーザー治療は必ずしも早期に必要ではありませんが、レーザー治療は、担当医が必要と判断したときには必ず受けるようにしてください。

血管新生を防ぐのに最も永続性のある良い治療ですが、治療は痛みやまぶしさを伴い、また高価です。

レーザー治療代は片目について5~18万円程度です(健康保険適用)。

④手術

硝子体出血や網膜剥離、血管新生緑内障が起こると手術が必要になります。

これは硝子体手術という手術です。

網膜剥離の場合には手術中に目の中へガスを入れますので、手術後は数日から2週間程度の「うつぶせ安静」などの姿勢制限が必要となります。

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