緑内障のレーザー治療
SLTについて
当院は開放隅角緑内障に対するSLT(選択的レーザー繊維柱帯形成術)を行っています。
SLT(選択的レーザー繊維柱帯形成術)とは
SLTは緑内障のレーザー治療の一つで、房水の流出を促す効果が期待できる治療です。
目は房水と呼ばれる液体が産生され、バランスよく排出されていますが、排出路にある繊維柱帯(フィルターの役割を果たす組織)が目詰まりすると、排出されづらくなり、視神経が障害されます。
これが最も多く見られる開放隅角緑内障と言われるタイプの緑内障のメカニズムです。
以前から緑内障のレーザー治療として、ALT(アルゴンレーザー線維柱帯形成術)という治療があったのですが、線維柱帯の組織が破壊されるデメリットがありました。
当院で行っているSLT(選択的レーザー繊維柱帯形成術)は房水の流れの妨げになっている、線維柱帯の色素細胞だけに効果がある特殊なレーザーを使用するため、線維柱帯の組織を破壊することがありません。
副作用がほぼ無い治療であり、近年の研究で第一選択(まず始めに行う治療)とした場合の効果が認められた治療です。
期待できる効果
SLTは線維柱帯の目詰まりを取ることで、眼圧の上昇を抑制する効果があり、治療を受けた方の7~8割の方で、現時点の眼圧が低下する効果があります。
治療がお勧めの方
- 毎日の点眼が負担となっている方
- 点眼の副作用が気になる方
- 妊娠や授乳で薬剤の使用を控えたい方
- 多忙で毎日の点眼が難しい方
- 点眼を忘れてしまうことがある方
イメージ
- (左)線維柱帯が目詰まりし、房水の排出が妨げられている
- (中央)目詰まりの元となる細胞をレーザーで
- (右)房水の流れがスムーズになり眼圧の上昇が抑制される
SLTの効果についての近年の論文
イギリスのThe Lancetに掲載された臨床研究
LiGHT(Laser in Glaucoma and ocular HyperTension:緑内障・高眼圧症に対するレーザー手術)研究
- 研究内容:718人の解放隅角緑内障患者さんを点眼で治療するグループと、SLTだけで治療するグループに分け3年間の治療効果を比較
- 研究結果:SLT群74%は、3年間点眼せずに眼圧コントロールができるようになった。医療コストの面でも、費用対効果が改善した。
日本眼科学会雑誌の臨床研究
- 研究内容:42人の解放隅角・正常眼圧緑内障患者さんに対してSLTを第一選択をする治療を3年間実施
- 研究結果:SLT後3年間は、眼圧が有意に下降した。MD slope/VFI slope(視野障害の進行速度を表す指標)の3年間の進行速度は緩徐であった。
従来は点眼治療を行った後で効果が不十分な場合にレーザー治療が検討されていましたが、これらの研究結果によって第一選択とする考え方が出てきています。
当院では点眼が負担になる方など、ご本人が希望される場合には積極的に実施して良いと考えております。
全ての方に適応があるわけではありませんが、毎日の点眼が負担に感じられる方は一度ご相談ください。
治療の流れ
レーザー治療は予約制で行っています。
まずは通常の診療時間内にご来院いただき、SLTの適応があるかを診察で判断します。
適応がある場合は、レーザー治療の予約をご案内いたします。
当日は受付から会計までの所用時間で1時間程度です。
当日および治療後の流れ
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- 視力・眼圧測定、角膜内皮細胞測定、
一過性の眼圧上昇を抑える「アイオピジン」を点眼後、診察
- 視力・眼圧測定、角膜内皮細胞測定、
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- レーザー照射
痛みは無く、5分程度で終了
- レーザー照射
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- 一過性の眼圧上昇を抑える「アイオピジン」を点眼
レーザー照射後の眼圧測定、診察
- 一過性の眼圧上昇を抑える「アイオピジン」を点眼
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- 翌日と1週間後に受診
一過性の眼圧上昇や合併症の有無を確認
- 翌日と1週間後に受診
費用
SLT治療は保険適用の治療です。
この治療自体の点数は「隅角光凝固術:9,660点」です。
民間の医療保険の手術給付金の対象となっている場合があります。
詳しくはご自身が加入されている保険の約款をご確認いただくか、保険会社にお問い合わせください。