流行性角結膜炎(ウイルス性結膜炎)
流行性角結膜炎とは?
アデノウイルスという感染力の強いウイルスによる結膜炎で、角膜(黒目)にも炎症を伴うことがあります。その他、エンテロウイルスによる急性出血性結膜炎というものもありますが、頻度はアデノウイルスによるものに比べると少ないです。
アデノウイルスによる結膜炎は、どこかでウイルスに感染してから3~10日後に突然発症します。この感染してから無症状の3~10日間を「潜伏期」といいます。
アデノウイルスにはいくつかのタイプ(8型、19型、37型など)があります。
症状
充血・目やに・涙です。充血や目やには著しく、「朝起きると目が開かない」ほどひどい場合もあります。子どもの場合は、目だけでなく発熱や倦怠感などの全身症状を伴うことがあります。
片目だけに発症した場合、多くの人が数日以内にもう片目に発症します。発症した目の下まぶたの内側(眼瞼結膜)に、濾胞という、粘膜の隆起が多くみられます。約半数の人で、耳の穴の前にあるリンパ節が腫れます(耳前リンパ節腫脹)。
リンパ節腫脹は外から見てもわかりませんが、耳の前を指で押すと違和感や圧痛を感じます。片目だけの結膜炎の場合には、同じ側のリンパ節が腫れる場合が多いです。
発症して最初の4~5日は、点眼治療をしていても充血や目やにの症状は改善せず、むしろ悪化していくことがあります。しかし、これは普通の経過で、発症してから10日から2週間程度で症状は自然におさまります。
流行性角結膜炎では、急性期を過ぎると角膜に混濁が残ることがあります。これに対してステロイド点眼薬を用いることがあります。
ウイルス性結膜炎に対する治療
現在、国内外ともアデノウイルスに対する特効薬はありません。治療は点眼薬による治療をすることが多いのですが、軽症の場合は無治療でよいです。
ウイルス性結膜炎では、細菌の混合感染を予防するためや炎症(充血)の改善目的に、抗菌点眼薬やステロイド点眼薬がよく処方されます。しかしこれには明確な根拠はなく、海外では無治療のことが多いと聞きます。ですから軽症のウイルス性結膜炎は、無治療で様子を見てよい場合もあると考えます。
近年、新しいタイプのアデノウイルスが流行性の結膜炎を引き起こすこと、およびその場合、治ったあとに角膜の表面に強い濁りを残す可能性が高いことがわかってきました。
その混濁を予防する目的でステロイド点眼薬の使用が推奨されることがありますが、長期間のステロイド点眼薬使用は、緑内障や白内障を引き起こす可能性があります。いつまで点眼薬を使用し続けたらよいのか、担当医に確認してください。
アデノウイルスによる結膜炎は、ほとんどの場合2週間で治癒します。もし2週間、点眼治療を続けても充血や目やにや涙の症状が治らない場合は、再度担当医の診察を受けてください。クラミジア結膜炎やヘルペス性結膜炎はウイルス性結膜炎に症状が似ていることがあるからです。
人にうつさないために
ウイルス性結膜炎は非常に感染しやすく、病院内や保育所、職場などで爆発的に流行することがあります(アウトブレーク)。家族内感染もしばしば見られます。
ウイルス性結膜炎そのものは2週間程度で自然におさまりますので、その間、他人にうつさないことが重要になります。
感染した人の涙の中には多量のウイルスがいて、そのウイルスが水場や濡れた衣類、タオルなどを介して伝染します。
感染した人の涙が周囲の環境(ドアノブ、プッシュボタン、手すり、キーボードやマウス、診察機器、机や椅子や床など)に付着した場合、約1ヵ月間 はウイルスが感染力をもって残っているといわれ、そこから二次感染が起こり得ます。子どもが夏場にプールでウイルスをもらってくることもよくあります。
一般的に発症から2週間以内は他人に感染させる可能性があります。周囲の人たち(家族や職場や学校など)は、感染者の涙が付着する可能性のあるものを周知して、それに触れないよう、触れた場合は手洗いを念入りに行ってください。
家庭内では、感染者はお風呂は最後に一人で入り、風呂桶のお湯は残さず流す、洗濯物は分ける、などの工夫が必要です。